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2019年7月11日木曜日

甲状腺がん検診の診断閾値を考える

論座の記事(https://webronza.asahi.com/national/articles/2019070300008.html?page=1)に発する甲状腺がん検診の是非に関する議論の中で共有できる話題が出たので、それについて少し詳しく書いてみたいと思う。

超音波による検診を行うにあたり、過剰診断を少なくするために、診断閾値をより悪性を強く疑う例にシフトさせ、スクリーニングする方法がとられた。
この戦略の基盤にあるのは、検査の感度が低いところに診断閾値を変えて、多少の見逃しが出ても過剰診断が少ない方を重視するという戦略である。
見逃しが増えることを許容し、過剰診断が減ることで、より害の少ない検診にしようということである。

そこで問題はどこで線引きをするかということである。
ここでの問題は、あくまで超音波検査の所見の中で線引きをしようと考えていることである。ここにはすでに超音波検診をしたほうがいいという前提がある。しかしそれは本当に前提として採用していいものかどうか吟味する必要がある。

超音波所見の線引きを動かすほかに、感度を下げて過剰診断を減らす戦略がないか考えてみる。
例えば、触診による検診。あるいはアンケート調査に基づく検診というのはどうか。さらにこの先に、検診をせず、過剰診断をとにかく減らすという戦略もある。

こうした複数の戦略の中で、超音波をまず選ぶ根拠は何か。超音波検査の中だけで診断閾値を考える根拠は何か。

超音波検査、触診、アンケート、検診無し、その4つの中でまず検討したほうが良いのではないか。もし検診を勧めることが妥当だとしても、最初の3つ全部でまず診断閾値を考えたほうがいいのではないか。

そう考えてみて、これまでの意見に変化があるかどうか、もう一度考えてみてほしい。

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