予防接種についての議論で考えたこと。
効果が副作用をはるかに優ることが明確な予防接種がなかなか普及しない。そういう状況で多くの人がイライラする。
治療の現場に目を向けると、それとはまったく逆に、新しい薬などがどんどん処方されていく。たとえば降圧薬。新しい降圧薬ほど普及が早い。またいったん処方された薬に副作用の危険があってもなかなかやめられない。糖尿病薬でのがんの発生なんて問題の情報の遅さ。
よく聞かれる意見に、治療の場合は、副作用に寛容で、治療効果がはっきりしていなくてもどんどん普及するのに、予防接種はどうして逆なのだろう。
どうしてこういう正反対のことが起こるのか。
しかし、これは正反対のことでなく、同じことが起きている。
この2つは実は似た者同士なのだ。
とにかく医療が普及した方がいい、そういう方向。
そしていつもそんなに普及しなくてもいいのにという方が少数派。
だから予防接種も徐々に普及していくだろう。そう心配することはない。
わたしが異常に感じるのは、予防接種の普及の遅さより、新しい治療の浸透の早さや副作用についての鈍感さの方である。
死亡例が出た場合に、副作用かもしれないと疑ってみるという姿勢はむしろ健全な面がある。ぜひ予防接種を見習って、膀胱がんの危険となったら、代替薬に切り替えるべきだ、というような議論がもう少しは起こってもいい気がする。
それを踏まえて予防接種について考えてみる。
予防接種後の死亡例が出たときに、確かに因果関係はない可能性が高いのだが、何の情報や研究も出ないうちに、これは因果関係はありません、というような発言が次々出てくるのを見るにつけ、これは治療薬の副作用に対する鈍感さと同じことが起きているように見える。こういう視点では、予防接種を普及させることはできるかもしれないが、危険な治療をスルーしてしまうかもしれない。
治療についても予防についても、私には同じ現象のように見える。
医療は普及した方がいいという、希望的観測、その点において、この2つは全く同じ構造をもっている。
0 件のコメント:
コメントを投稿