今行われているがん検診はどれほど有効なのだろうか。がん検診をすればがんで死ぬ人はいないくなり、がん検診をしない人はがんになるとみんな死んでしまうのだろうか。
例えば乳がんで見てみよう。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=23737396の乳がん検診についてのランダム化比較試験のメタ分析である。
13年の追跡の結果、がん検診をしない群の乳がん死亡が0.43%、がん検診群の乳がん死亡率が0.36%である。四捨五入すれば、どちらも0.4%と差がわからなくなる。
もちろんこれは統計学的に有意に乳がん死亡を減らしたという結果ではあるが、実際の数字を見てみると、こういう効果なのである。
がん検診による害の問題がいかに重要か、わかるのではないだろうか。
診断閾値で対処するというようなことがいかに荒唐無稽なことであるか、一目瞭然である。
予想されるがん検診の効果は、直感的な効果よりはるかに小さく、害の危険ははるかに大きい。まずはこういう一般論を押さえたうえで、がん検診の議論はなされなければいけない。
この件に関してはひとまずこれで終わりたい。
福島の甲状腺がん検診が直ちに中止され、個別の相談へ引き継がれることを切に望む。
2 件のコメント:
名郷先生、岡山大学大学院の津田敏秀と申します。名郷先生の福島県の現状に関連して述べられた検診に関する記事に対して、以下のコメントを書きました。今まで気づかずにすみませんでした。なお、先生にはコメントを送りますが、もっと過激な意見を述べている菊池誠先生には送りません。彼は公開討論を避けて、自分の意見ばかりを述べるからです。ちなみに、私はがん検診に関しては否定はしませんが消極的意見の持ち主です。特に部位ごとや手法の選択や費用効果については、もう少し丁寧に行うべきという立場です。以下はASAHI論壇の先生のご意見に対するコメントです。補足すべきところがありましたら、補います。
名郷先生は公衆衛生の専門家ではありません。ましてや環境汚染による発がんの問題の専門家でもありません。名郷先生の間違いは福島の状況や被ばくによる発がんのもんだに関して何ら知識がない点です。論文も読んだことがないのでしょう。すでにチェルノブイリ原発では、被ばくしていない子どもには甲状腺がんはほとんど見つからないというエビデンスがあります。その一方、福島では息をして事故当時福島県に住んでいた子供は全員被ばくしています。そもそも自然界に存在しない放射性ヨウ素の影響は強烈で、少しの被ばくでも小児甲状腺がんが増加します。20年~30年前の日本では放射線被ばくとは関係なくがん検診の是非の議論が盛んに行われていました。名郷先生や参照されていたWelchの意見は当時の日本では出尽くした意見です。ただしその議論の目的は日本は主に肺がん検診の費用効果で、アメリカではWelchの言うようにがん検診の是非と少々違うようです。いずれにしても放射線被ばくによる発がん影響に関する知識もなしに、現在の福島県の公衆衛生政策に及ぼしかねない意見を公的メディアで「専門知識があるかのように」述べるのはやめるべきです。
専門家でないという指摘はその通りですが、専門科じゃないものに発言するなと言っても無駄ですよ。私は多くの場面で専門家なのか専門家でないのかよくわからない立場で呼ばれたりして、発言してきましたが、専門家のほうがとんだったということはよくありました。そうでなければ作手村の診療所というような立場で、あちこちで意見を求められたりしないでしょう。津田先生に「述べるのはやめるべき」と言われたところでやめることはありません。そんな言論封殺のようなことに対しては反対です。素人の立場で発言を続けます。
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