インフルエンザの流行がなかなか収束に向かわない。しかし、「新型」と呼ばれた今回のインフルエンザが、これまでのインフルエンザとさして変わらないということはもう明らかだ。流行が続くとしても、別にどうということはない。外来が少々忙しいというだけのことである。それはこれまでのインフルエンザと同じこと。
インフルエンザ自体は、決して新型ではない。しかし、確かに新型であった。これまでのインフルエンザの流行とは明らかに違う。それではなにがいったいこれまでと違う新型だったのか。インフルエンザに対する反応が新型だったのである。かつて無効だとして、小学校から葬り去られたインフルエンザワクチンが、われもわれもと取り合いになっている。かつてのワクチンより、遙かに有効なワクチンが開発されたわけではない。同じワクチンに対する、市民やマスコミの反応がこれまでと違う。誰からワクチンを接種すべきか、そんなことはこれまで議論されたことはない。ある開業医が、優先順位をごまかして自分の孫に接種したというのが新聞に載っていた。医療者もこの変わりよう。たぶんこの医者はこれまで家族にワクチン接種をしていなかったのではないか。そういう気もする。
マスコミもまあこりもせず、昨日も今日も、インフルエンザで死亡、脳症発症とか、これまで全く報道もしなかった輩が、そういう記事を載せている。インフルエンザに気を取られていう間に、また誰かがかげで悪いことをしているに違いない。インフルエンザはもういいから、そうでない大事な事件をちゃんと追っかけてほしい。
ただ、外来患者の一部にはこれまでとかなり異なっている人が混じっている。これまで病院にはあまりこなかった人たちが、多く訪れる。その上インフルエンザというには結構元気そうな人が多いのだ。なぜ病院に来るかといえば、家族や会社の人にいわれてくるのである。ひどい会社になると、インフルエンザでないという証明をもらってこないと出社できないというのだ。こんなことは今だかつてなかったことではないだろうか。インフルエンザでないことの証明を必要とする会社。おそろしい。なにが恐ろしいのか。
そこで本題である。インフルエンザは確かに怖い。しかしこれまでと同じように怖い、それだけである。誰もこれまでと同じように怖いとは報道しないし、そのようには受け取らないが。それで今回、新型となってなにが怖いか。インフルエンザに対する差別意識が圧倒的に高まっていることが、もっとも怖い。
病気に対する差別と戦うことこそ、医療者の大きな役割ではないか。それを増長するようなことばかりをして、いった何のため医療か。
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