2011年3月14日月曜日
想定内
世の中を人間のコントロール下に置くことはできない。
常に人間の方が支配される側である。
そういう当たり前のことを目の当たりにする。
ビルの5階で、これから講演というところで突然の揺れ。
どうすることもできない。ただ壁に張り付いて、揺れがやむのを待つしかない。
津波に飲み込まれず、こうして生きているのは、単に運が良かっただけのことだ。
「想定外」という言葉の裏には、こちらがコントロールできる範囲が想定されている。範囲を設定している以上、コントロール不可能な部分があることを本当は想定している。
いまだかつてない大地震は起こる可能性があるし、いまだかつてない津波も起こる可能性がある。想定外と言いつつ、想定内の範囲が設定されたときに、想定外も少ない可能性の中で設定されている。その境界は決して科学的なものではない。可能性と言うだけでなく、実際にもマグニチュード9以上というような大地震が過去に起きている。
想定内というときの境界の設定は、お願いだからこの範囲に収まってくれというような祈りであって、決して科学的なものではない。
科学は、科学によってすべてがコントロールできるということではなく、すべてをコントロールすることなどできないことを明らかにした。
実際そういうことを、医師としてこれまでさんざん経験してきた。
人は死ぬのである。それをコントロールすることはできない。少なくとも今の時点では。
人が死ぬのと同じように、想定外の地震は起こるし、津波は起こる。
それは想定内のことだ。
われわれはそういう世の中に生きている。
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