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2016年3月12日土曜日

ディオバン事件再び


ディオバンの事件からすでに3年以上が経過した。p値が0.05未満に拘泥するなとの声明が出されたこともあり、私なりに以前よりp値の解釈について考えていることをディオバン事件をネタに整理しておく。

ディオバンが属するARBが他の降圧薬よりいいのではないかというのは、最初ELITEI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9074572)という研究の事後解析によって、示された。
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ARBロサルタンが、ACE阻害薬カプトプリルに比べて、死亡率が低いというのである。
この研究は事後解析であるので、この時点でのARBがACEに勝るという仮説の事前確率を仮に五分五分の1/2と仮定しよう。

その後ACEとARBによって死亡率に差があるかどうかを一次アウトカムとしたELITEII(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10404354)が行われ、両者には差がないという結果が示された。

この研究はα=0.05、β=010で計画されている。これは感度90%、特異度95%の検査でこの仮説を検討したともいえる。陽性尤度比を計算すると感度/(1-特異度)=18となる。陰性尤度比は(1-感度)/特異度=2/19となる。

ELITEIの結果からARBがACEに勝る事前確率は1/2として、ELITEIIの結果、差がなしとなったので、ベイズの定理により、ELITEII後のこの仮説が正しい確率は以下のように計算される。

事前オッズ×陰性尤度比=事後オッズ
事後オッズ=1×2/19
事後確率=2/21となる。

この後ARBとACEを比較したメタ分析(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17414657)が発表され、再度差がないとの結果である。
ここで同様に事後確率を計算すると以下のようになる。

事後オッズ=2/19×2/19=4/361
事後確率は約1%

ここでJIKEI HEART STUDY(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17467513)でARBがよいと出た。
計算は同様である。

事後オッズ=4/361×18=72/361
事後確率=72/433=16.6%

ARBが他の降圧薬にうわまわるという仮説の確からしさは16.6%に過ぎないことがわかる。

捏造を別にしても対して確からしい仮説ではなかったことがわかる


論文解釈におけるp値とベイズ推定の融合というような新しい流れについて書いてみた。

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