村上陽一郎の新刊。
全体をとらえる、という意味でとても参考になる。ただ、全体をとらえる方法というより、合意を得るという方向に軸足があって、自分自身とは少し方向性が違う。
そんな中での印象的なフレーズ。
<クローン羊ドリー誕生の報道があった時に、あるアメリカの産婦人科医に電話がかかってきて、「わたしたちの愛の結晶の子供をあの方法で持つことができるまで、あと何年待てばいいのでしょうか」と質問されたそうです。>
<クローン技術が可能性を開いたことによって。それまで存在していなかった欲望が顕在化する、この果てしなさに辟易します。今私たちは、科学技術と欲望の両輪がお互いに激しく刺激し合って果てしなく続いていくという事態にさしかかっています。どこで止めるのか、止めるものがあるとすれば何なのかというのは確かに問題です。>
臨床倫理の問題に、人間の欲望の問題を考慮するというのは、とても重要だ。MRIをとってくれという患者にどう対応するかというのも、患者の希望というような言い方でなく、欲望の問題として整理すると、別の面が見えてくるかもしれない。
以前これを絶望と呼んだが、希望、欲望、絶望、という並びは、かなりこの問題を明らかにする。
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