「マロウンは死ぬ」という小説を思い出した。寝たきり老人の小説。違うか。
高校時代の友人から、お前にぴったりの本だといわれて読んだ。
正確には覚えていないけど、主人公がつぶやく以下のような一節。
「かつては、道は全く見えていないのに、たどりつく先は分かっていた。それが今じゃどうだ。道ははっきり見えているのに、どこへ行くのかはさっぱり分からない」
読んだ当時、友人が言うには、前者はボクシングで、後者はプロレスだと。そして当然のように、われわれはボクシング派なのであった。
今から思えば、確かにそうだ。当時プロレスよりはボクシングだった。しかし、今はとてもボクシングだとはいえない。プロレスでもないんだけど。まあどうでもいいというかなんというか。でも、それはとても好ましいことのように思える。
見えないふりをするのは簡単だし、本当はたどりつく先なんてのは分かっている。その通り。ただ、死ぬなんてことを考えたこともないから。そんなのが何かかっこいいように思うのだ。
だから、道ははっきりと見えていると言おう。死ぬということ以外はさっぱり分からない、それでいいじゃないか。
でもそれがいいのだ。とりあえずそこにある見えている道を歩こう。道じゃないように思えるかもしれないけど、それが道なのだ。どこへ行くかは分からないけど、どこかへは行くのだ。そして、その先は例外なくみんな同じだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿