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2011年2月15日火曜日

医師は不足しているか2

 
医者の需要を増やしているのは一部では医者自身だ。
早期発見を心がけましょう。
早めに受診しましょう。
少しでも心配があれば専門医に気軽に相談しましょう。

それにメリットがあることは認めるが、デメリットもあることをもっと明確にすべきではないか。

最近ある学会で、がん検診の問題点について指摘した。
検診により乳がんによる死亡は確かに減少する。しかし、がんの罹患全体は増え、乳がんと診断され治療した患者では乳がん以外のがんによる死亡が増加する。乳がんによる抗がん剤の治療や放射線治療で別のがんが増えると考えればこれはとても納得のいく結果だ。

こういう中で検診を勧めるとどうなるか。
検診の業務が増え、精密検査の業務が増え、治療の業務が増え、さらには治療による副作用に対する業務が増える。乳がん検診の場合、それ以外のがんまでかなり増えているという研究結果が示されている。その分の仕事が増えるのだ。それに対して、得られるメリットは2000人を検診して、ようやく1人の乳がんによる死亡を減らすくらいの効果である。こういう事業を公費でやるとすれば、相当な議論が必要だが、効果が明確だというだけで、害やコストのことが議論されないまま、どんどん検診が勧められる。

人の命は地球よりも重い、そんな幻想で、一人でも助かるのだからと、医療を進める時代はとっくに終わっている。しかし、乳がんを減らさなければ、そういう声だけが聞こえる。

逆に医者が足りないのだから、そうそう検診事業を進めるわけには行かないという医者の意見を聞いたことがない。

医師不足を叫ぶ人たちは、何かの医療をむやみに進めつつ、医師不足を訴えるのは一種のマッチポンプ状態にあることを自覚すべきではないか。

自分で需要を増やし、自分で供給が足りないという。これはまさにマッチポンプだ。

どういう医療が必要なのか。医療費の投入に見合うのか。そういう議論なしに医師不足だけを叫ぶと、医療は今度こそ本当に崩壊への道をたどるだろう。
 

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